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「ここはどこだろう?」

 

突然迷い込んだお伽話に出てくるような街中が私の目に映った。

私は夢でも見ているのだろうかと目を擦ったり、頬を抓ったりしてみたけどやっぱり痛いし、これは幻なんかではなかった。

何かイベントでもやってるのかな、と平凡且つ何不自由なく面白いこともつまらないことも並々に経験し、非日常を知らない私は純粋に詮索もせず、辺りを見回した。

私は確か普通に繁華街を歩いていたはずだ。夕方になって日も落ちてきたからそろそろ家に帰ろうとしたら…ああ、多分方向を間違えたんだ。本当は危ないけど裏通りから行った方が近かったからそこを通って、そこで何か道を間違えてしまったんだ。

 

「そしたらなんでこんなファンタジックな世界が広がってるんだろう」

まるで漫画じゃないか。平凡な主人公がある日突然メルヘンな世界に迷い込んでいたとかものすごくありがちな設定だ。しかしこれは現実だからそんな妄想だって風船のようにすぐパンッと割れてしまう。

今の心境を言おうか、すごく不気味だ。

 

現在の時間は午後六時を回ったところで、今はもう秋だから日が落ちるのが早くて外はもう真っ暗である。街灯やお店の光で今現在私がいる場所はとっても明るいけど、それが不気味だとか、イベントがこんなところにあるとかそういうのじゃなくて、単純に人が怖いのだ。

確かに夜になれば明るい時とは違い、不良とかヤクザとかそういうのはちらちらと繁華街をほっつき回っていたりするだろう。でもそういうので人が怖いとかじゃなくて…ああ、言葉では言い表わせられない。

でも、ものすごく静か…。私の家はマンションの一人暮らしだからわかる。マンションの一室でテレビも何も付けず、ソファーでボーッとしている時の静けさだ。それにいくらかグサグサと何かが刺さるような居心地が悪い感じ。

人間観察だとか人の心情を読み取ることは得意だから、目立たないようにひっそりと周りの人々を観察する。

 

「へぶっ!」

 

なんということだ、転んでしまった。

痛恨のミスだ。こんなときに周りを見ているようで見ていない癖、直らないものだろうか…と冷静に言っているようで、実は内心はものすごく焦っている。

知らない街であまり目立たないように動こうとしたら初っ端からこんなドジを発揮してしまった。

周りの視線はグサグサと私に突き刺さり、私は未だに地面とキスをしている。汚いとか考えてる暇はなかった。とりあえず、この街から出たいと切実に脳内を占拠している。

 

ようやくもそっと動き出すと、大丈夫~?と緩い声で私の前でしゃがむ人影が地面に映る。

「あ、…はい…大丈夫で…」

 

手を差し出してくれたので、私は顔を上げてその人の顔を見たのだが、背筋が凍った。

 

 

 

「どうしたの?」

「え…?あっ、いや…なんでもないです。ありがとうございます」

 

何だコイツは。

 

顔には出さなかったけど、明らかにこの人の目瞳孔開いててものすごく怖い。

まるで殺人鬼じゃないか、人を殺せるような目をしている。そんな事わからないと思いきやわかるのだ。近所で殺人事件が起きる前に、犯人の顔を見て今と同じ感覚だったのを思い出した。コイツはやばい奴だ。

どうやら恐怖で足が竦んでしまったらしい。しかし声は震えていなかったらしく、不審には思われなかった。ここでは、もしかしたらこういう奴がうじゃうじゃ居て、それが普通なのかもしれない。そう思うと私はここで死ぬのでは?と悟りを開く。

その人の手を本当は取りたくなかったけど流れ的にまずかったので、助けていただいた。

 

 

 

「大丈夫?ドジっ子なんだね~さっきから見てたけど迷子?」

 

これはまずいぞ、ここで迷子と頷いて、じゃあ違うところから来た一般人なんだみたいな事を言われたら私はここの情報をうっかり漏洩しないように捕まるか、殺されるかどちらかじゃないか!

 

「そうなんです、方向音痴で…ここら辺でバーとかってありませんでしたっけ?」

私結構賭けたよ、これで無いとか言われたら私はもうどうしようもないぞ。

 

その男は開いている瞳孔をもっと細くして、ああ!と笑った。

「それってTWILIGHTの事?」

 

何それ宵闇!?

迷うとマズイのでコクコクと頷いた。大丈夫だろうか、悪化してないだろうか…この状況。

 

 

「何だ、じゃあ途中まで道一緒だから案内してあげるよ。本当に方向音痴なんだね?キミが今来た通り道にあったのにさ」

「マジで!?…あ、いや…すみません、あったんですね…全然見てませんでした」

「あはははははは」

その男は可笑しそうに腹を抱えて笑い出して目には涙を溜めていた。そんなに可笑しかった発言か…?

 

挙動不審になる私がまたツボッたのか、その男は笑いが収まりそうになったところでまた大爆笑する。

殺伐とした街中に高らかとした狂気を感じさせる笑い声が響き、周りの人達も思わず身を引いた。うん…この男、この街でも相当浮いてて危ない奴なんだろうな…と私は生命をもう諦めていたせいか、頭は冷静だった。

 

 

 

「キミ面白いね!気に入ったよ、今度会ったら楽しいことして遊ぼうか」

 

ちょっと待って、それフラグ!!!

 

「いえ、遠慮しておきます…。今度会いましたら挨拶させていただきますよ」

「挨拶だけなんてつまらないじゃない?ああ、そういえばキミ名前何て言うの?僕は東雲蛇穴って言うんだ。よろしくね」

 

待って待って待って、東雲蛇穴ってとても聞いたことがあるんだけど…再び背筋が凍ってしまったのだけど。

彼の顔を見たら東雲蛇穴だって納得は出来るけど、それが今私の目の前に居るって事が信じられない。

彼は有名人だ。彼は顔こそは公開されては居ないものの名前だけはよくテレビに出されている。

顔を出さない芸能人か?それともコメンテーターか?全然ジャンルが違う。

 

 

「ああ…東雲さんですか…」

「あは、僕の事知ってくれてる?あー確かに今テレビで凄いもんねぇ。僕人気者だ、嬉しい」

 

こうやって喜ぶ限り、相当な精神異常者なのかもしれない。かもではなく、精神異常者だろう。

 

 

「えーとね、昨日は5人殺した!一昨日より少なかったよね?でも、まあが綺麗な人あんまり居なかったからさー今日は何人居るかな?キミ当ててみてよ。そしたらそのコレクション特別にキミに見せてあげるからさ」

 

ほら、異常者だろう?

こんなに嬉々と平然で人を殺したと言えるなんて異常の他ない。しかも目だ。

コイツ、東雲蛇穴は連続殺人犯。俗にいう、殺人鬼だ。よく厨二病を患わってる患者は殺人鬼ってイケメンでかっこいいじゃん!だなんて寝ぼけた事をほざくが、このコイツの目を、笑った顔を見てそう思えるだろうか。無理だ、怖いだけだろうこんなの。

 

しののめ さらぎ

トワイライト

りんつば

ひいらぎ かんな

タイトルです。ここをダブルクリックしてください。

段落です。テキストを追加したり編集するにはここをクリックしてください。ここはお話をしたりあなたについて訪問者に知ってもらうのに絶好の場所です。

彼は毎日のように人を殺している。人を殺す快感というよりも人間の目に魅力を感じる相当な変態らしい。

一昨日は14人殺され、昨日は5人、今日は…なんて連続すぎる殺人をしていても未だに捕まっていないある意味天才の殺人鬼。どうやって逃れてきたかはわからないが、何度も警察を掻い潜ってきた奴だ。相当頭はキレるんだろう。

こんな奴に本名を教えてみろ、ここで死ななくともいつか死ぬ。

 

 

「当たるかどうかわからないけど10人ですかね?」

 

冷静を装ってみる。こんな異常な質問に馬鹿正直に答える私も相当イカれちゃってるみたいだけど、全然違うし私は早くこのおかしな街から出たいのだ。

 

 

 

「10人かあ!なるほど、いいね。そのぐらいがしっくりくるかも!じゃあ僕今日は10人殺してくるね!」

 

なんか私が悪いみたいになってますけど、10人って答えたせいで本当に10人殺す気ですけどこの人。っていうかもう当てるとかそういう事じゃなくなってるんだけど…!!

 

ってね、でも私の内心はものすごく焦っているわけで…かの有名な殺人鬼さんが目の前に居て、もしかしたらその10人っていうのは私も含まれちゃったりする展開も容易に考えられるわけで、平凡で特に何事も無く暮らしてきた私にとってこの状況と言うのはトラウマになるだろう瞬間で、その瞬間もあっという間に終わって天に召されちゃったりするわけで…もう殺される事しか考えていないのだ。

この状況というのは案外冷静になれたりするものだ。ああ、私死ぬんだな…って一瞬で自分の状況を理解し、飲み込める。人間って怖いと思う。

逆に死ぬんだなとわかって慌てふためいて逃げ出す奴も居るだろう。そういう奴が一番フラグを回収しやすいが、私みたいなパターンもいずれフラグを回収することは目に見えている。

私の目の前で楽しそうに笑っているコイツはいずれ、私を殺す。時間とか関係なく、殺されるというフラグは既に立てられているのだ。そのフラグをへし折ろうともきっとへし折ろうとした此方の身が滅びてしまう事だろう。何も出来ない、というのが今の置かれた状況である。

この殺人鬼の目は私を鋭く射抜く。視線だけで殺されてしまうほど、彼には異様な雰囲気と威圧があった。

 

「キミの目も素敵だよね…日本人でしょ?それなのに青く澄んだ瞳してる…。漆黒の瞳の器に透き通った水が溜まってるみたい…ああ、綺麗だ」と私の目の周りを優しく触れてきた。これはこの後目にいきなりグサッて指を突っ込まれるフラグだから回避しよう。

 

「ありがとうございます東雲さん、あの…それでTWILIGHTというのは…」

「ああ、そうだったね」

東雲さんは手をパッと離して、店へと歩き始めた。

本当に怖い、この人。いきなり振り向いてやっぱり我慢できなくて目取っちゃった♪とかありえそうだから怖い。

 

 

「ねーねー名前何て言うのー、逸れちゃったけどさ!」

やはり逃れられないんだこれ…!

 

「えと、…私は凛燕って言います」

この瞬間で考えた適当な名前で私は今後付き合う事になるのだ。

 

私の本名は柊 神流

マンションの一室に一人暮らしをしているしがない凡人だ。才能は特に持ってないし、勉強もあまり出来ない。運動はそこそこなどこにでも居る高校3年生。

特技もなし…でも強いて言えば神流って何考えてるかわからないね!って言われることはある。褒めては無いんだろうなとは感じた。

 

そんな私がこんな場所に居るなんて普通は夢だと勘違いするだろう。

 

「バーってここですか?」

「うん、キミ凄いよね~そんなに小さくて結構依頼とかバンバンやっちゃう感じ?TWILIGHTは殺し専門に集まる集会所みたいなところだからね。つばちゃんの口からTWILIGHTだなんて出てきた時はビックリしたよ。あはははは」

 

何よそれ、聞いてない。

恐ろしい空間に来てしまい、私は立ち眩みしそうになった。

 

 

そのバーという名の集会所を見渡すと腕に大きなキズが出来たごっつい人だとか、ナイフを投げてダーツしてる奴だとか、全身黒ずくめで囲んで話ししてる奴とか居てもう…ほんとに死にたい。

東雲さんも相当な異常者だけど、そんな東雲さんにまだこの空間に居てほしい、1人にしないでほしいと心底思った。別に誰かと約束してるわけでもないし、こんなところ一生縁が無いところだ。東雲さんがここから出て行った瞬間に私もさようならしなければ絡まれて別の意味でバイバイだろう。

 

 

「誰かと約束してるんでしょ?じゃ、僕行くからさ」

「(え…えぇ…ちょっ…一人にしないで!?)はい、わざわざありがとうございました。東雲さん」

「あはは、全然いいよ。楽しかったしね!これでつまらなかったら殺しちゃってたかもしれないけど♪また会えるといいね。じゃ」

さらっと恐ろしい事を言った東雲さんは笑いながら集会所を後にしてしまった。

どうしよう、東雲さんに殺されていたほうがまだここで殺されるよりマシだったのかもしれないと既に私の思考はおかしくなっていた。

 

私はTWILIGHTの入り口付近でひたすらに佇んでいた。ここでの影の薄さは役に立っただろうか…!このまま、このまま外に…と音を立てず出ていこうとするが誰かに肩を掴まれた。その瞬間にサーッと顔が面白いくらい青くなったのは言うまでもない。

 

>>Chapter0

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